臨床心理学における「量的研究」と「質的研究」は何がどう違うの?

今回は、「臨床心理学における量的研究と質的研究の特徴、相違点、相補性」について自分の言葉で説明できるようにまとめていきたいと思います。

臨床家は「心理臨床の実践家」であると同時に「科学的な研究者」でなければならない!

臨床家は経験則的に”効く・効かない”の判断を行うのではなく、科学者として、心理臨床の効果を客観的に測定し、効果の高い介入方法を採用しなければならない。(エビデンスベースド(実証に基づく)臨床心理学)

それによって得られた科学的知見を活用し、臨床心理学の発展を求める研究方針が「科学者ー実践家モデル」である。

心理臨床における特異性・個別性の高い事例では、「科学者ー実践家モデル」を適用できない!じゃあどうする!?

心理臨床において扱われる数々の事例は、特異性や個別性が高いものも多いため、介入効果の検討を行うにあたり、科学者ー実践家モデルに従った標準化された手続きや効果測定を導入することが難しく科学的なエビデンスの提供を行うことが難しい場合がある。

この場合、事例の個別的側面への介入効果の検討を行う必要となるが、その方法として用いられるのが事例研究である。

事例研究では、カウンセラーが事例への関与観察を行い間主観的データを収集することにより、個別性の高い治療実績を示すことが可能となる。

臨床心理学における「量的研究」と「質的研究」の共通の目的・相違点・相補性とは?

「量的研究」「質的研究」の共通の目的とは?

臨床心理学の発展に寄与すること

「量的研究」「質的研究」の相違点とは?

  量的研究 質的研究
研究方法 科学者-実践家モデル(に基づく)単一事例実験 関与観察(に基づく)事例研究
目的 客観的データによる科学的エビデンスの提供 間主観的データによる個別性の高い治療実績を示すこと
得意なこと 事例の普遍的側面への介入効果の検討 事例の個別的側面への介入効果の検討
苦手なこと

各事例の個別的側面へのアプローチ

(量的研究で得られた知見は、特異性や個別性が高い事例には適用できない!)

各事例の普遍的側面へのアプローチ

(質的研究で得られた知見は、介入効果に対する客観的な証拠にはならない!)

得られた知見はどんな事例向き?

普遍性の高い事例

(標準的な手続きを採用できる事例)

個別性の高い事例

(標準的な手続きが採用できない事例)

「量的研究」と「質的研究」の相補性とは?

 

事例の普遍的側面へのアプローチ

(効果介入の検討)

事例の個別的側面へのアプローチ

(効果介入の検討)

量的研究 向く 向かない
質的研究 向かない 向く

この通り、両者は一長一短!

↓↓↓

両者を相補的に組み合わせることが望ましい!

「臨床心理学における量的研究と質的研究の特徴、相違点、相補性」について自分の言葉で説明してみた結果

【臨床心理学における量的研究と質的研究の特徴、相違点、相補性について自分の言葉で説明してみる!】

(臨床心理学において質的研究と量的研究が混在している理由)

「行動の科学」と称される心理学の研究において、心理学の実践家である臨床家は、科学者ー実践家モデルに従い、科学者として客観性・再現性の高い科学的研究法を用いることで介入の効果を客観的に検証するのが一般的である。

しかしながら、実学である臨床心理学においては、科学的研究法を用いても客観性や再現性を保証できない特異性や個別性の高い事例が存在し、科学者ー実践家モデルを適用できない場合がある。

そのため、臨床心理学では、事例の普遍的側面への介入効果の検討を行う量的研究と、事例の個別的側面への介入効果の検討を行う質的研究が混在することになる。

(量的研究とは?)

量的研究とは、科学者ー実践家モデルに基づいて単一事例実験として行われることが多い。

これは、心理療法の介入の効果を客観的に検証し、客観的データを蓄積することにより科学的なエビデンスの提供を目的としている。

(質的研究とは?)

質的研究とは、関与観察に基づいて事例研究として行われることが多い。

これは、事例への関与観察を行い、事例の個別的側面に着目し間主観的データを収集することで個別性の高い治療実績を示すことを目的としている。

(量的研究と質的研究の共通点)

これらの研究は、方向性は異なるものの、臨床心理学の発展に寄与するという点では共通する。

(量的研究と質的研究の相補性)

量的研究は、事例の普遍的側面への介入効果の検討には向くが、個別的側面への介入効果の検討にはあまり向かない

一方の質的研究は、各事例の個別的側面への介入効果の検討には向くが、普遍的側面への介入効果の検討にはあまり向かない

つまり、両者研究は、一長一短であり、相補的に組み合わせることが望ましいのである。

以上、この記事が私と同じように臨床心理士指定大学院を目指していらっしゃる方の参考になりましたら幸いです。

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