今回は、実際の学校現場において「発達障害が疑われる児童に関して予想される問題と保護者への成育歴聴取の要点」そして「本件児童を実際にアセスメントする場合に実施する心理検査と予想される結果」について自分の言葉でまとめていきたいと思います。
発達障害が疑われる児童についての情報は下記の通りである↓
- 小学校1年生男児
- 公立小学校通常級に通う。能力的に低くない。
- 文字は読むが書くことを厭がる
- 忘れ物が多い
- 探し物ができない
- 整理整頓ができない
- 体育は好きで友達ともよく遊ぶ
- 離席はないがやや落ち着きがない
代表的な発達障害の行動特徴と検査方法をまずは確認!
発達障害とは、コミュニケーションや言語、社会性などに異常が現れる脳機能の障害であり、DSM-5では「神経発達症群」という大分類で提示されている。
自閉スペクトラム症
【行動特徴】
ウィングが提唱した三つ組という徴候を表す。
三つ組とは、「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「想像力の障害や興味・行動の限定」である。
【検査方法】
WISC-IV(ウェスクラー式児童用知能検査)を用いて、特定領域の能力の落ち込みを査定する。
【検査結果に見られる特徴】
「言語理解」が低く、相対的に「知能推理」が高い傾向が見られる
これは、自閉スペクトラム症に特有の「言語発達の遅れと、視覚優位の認知特徴」が反映されたものと考えられている。
注意欠如・多動症(ADHD)
【行動特徴】
主に「不注意」「多動」「衝動性」の兆候を表す。
また、ADHDは、「不注意優勢型(注意欠如障害:ADD)」「多動・衝動優勢型」「混合型」に下位分類されることもある。
【検査方法】
K-ABC(カウフマン心理教育テスト・バッテリー)を用いて、認知処理(同時処理と継時処理)の特徴を査定する。
【検査結果に見られる特徴】
(直観的判断に頼るので)同時処理の得点は比較的高いが、(物事を順序立てて処理することが苦手なので)継次処理の得点が落ち込みがちである
限局性学習症
【行動特徴】
主に「特定領域に限定された発達の遅れ」を徴候とする。
【検査方法】
WISC-IV(ウェスクラー式児童用知能検査)を用いて、特定領域の能力の落ち込みを査定する。
LDI-R(LD判断のための調査票)を用いて、学習症で想定されるさまざまな能力を査定する
【検査結果に見られる特徴】
知的発達の全般的な遅れはないにもかかわらず、書字・読字・計算・推論などの特定の領域に発達の遅れが見られる。
児童の行動特徴から疑われる発達障害とは?
- 小学校1年生男児
- 公立小学校通常級に通う。能力的に低くない⇒自閉スペクトラム症の可能性は低い
- 文字は読むが書くことをいやがる⇒限局性学習症の書字障害の可能性あり
- 忘れ物が多い⇒ADHDの可能性あり
- 探し物ができない⇒ADHDの可能性あり
- 整理整頓ができない⇒ADHDの可能性あり
- 体育は好きで友達ともよく遊ぶ⇒自閉スペクトラム症の可能性は低い
- 離席はないがやや落ち着きがない⇒ADHDの中でも不注意優勢型(注意欠如障害:ADD)の可能性あり
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ADHDの不注意優勢型と限局的学習症の書字障害の併発が疑われる!!
ちょっと待った!だからと言って発達障害だと決めつけてはダメ!!
本件児童の行動特徴が、発達障害の兆候ではなく、他の要因(視覚や聴覚の異常、親の養育態度、条件づけなど)によるものである可能性もある。
そのため、心理査定の際には、発達障害とは決めつけず、そのパターンを想定しながらも生物心理社会モデルに従って多角的に情報収集(聴取)することが必要となる。
つまり、知能検査は、確定診断するためのものではなく、あくまでも補助的に使用されるものであることを忘れてはならない。
「発達障害が疑われる児童に関して予想される問題と保護者への成育歴聴取の要点」について自分の言葉で説明してみた結果
【発達障害が疑われる児童に関して予想される問題と保護者への成育歴聴取の要点について自分の言葉で説明してみる!】
(本件児童の行動特徴から予想される問題)
本件児童の「忘れ物が多い」「探し物ができない」「整理整頓ができない」「やや落ち着きがない」といった行動特徴から見えてくるのは、注意力の問題である。
ADHDを疑うことができるが、「離席はない」ということから、ADHDの中でも不注意優勢型(注意欠如障害:ADD)の可能性が考えられる。
また、「文字は読むが書くことをいやがる」という特徴から限局性学習症の書字障害も疑うことができる。
以上のことから本件児童は、ADHDの不注意優劣型と限局性学習症の書字障害の併発が疑われるケースであることが考えられる。
(保護者への成育歴聴取の要点)
しかしながら、本件児童の行動特徴が、発達障害の兆候ではなく、他の要因(視覚や聴覚の異常、親の養育態度、条件づけなど)によるものである可能性もある。
そのため、心理査定の際には、発達障害とは決めつけず、そのパターンを想定しながらも生物心理社会モデルに従って多角的に情報収集(聴取)することが必要となる。
具体的な聴取の内容としては、「不注意がみられるようになったのはいつごろか」「読み書きができるようになったのはいつごろか」「幼稚園や小学校で特に指摘されている特徴はないか」などである。
「本件児童を実際にアセスメントする場合に実施する心理検査と予想される結果」について自分の言葉で説明してみた結果
【本件児童を実際にアセスメントする場合に実施する心理検査と予想される結果について自分の言葉で説明してみる!】
ADHDの不注意優劣型と限局性学習症の書字障害の併発が疑われる本件において、用いられる可能性がある検査は、WISC-IV、K-ABC、LDI-Rである。
WISC-IVでは、特定領域の能力の落ち込みを査定する。
本件児童に書字障害が疑われていることを考えると、、視覚的な記憶や文章を組み立てる認知処理に問題がある可能性があるので、処理速度や知覚推理の指標得点が落ち込む可能性がある。
K-ABCでは、認知処理(同時処理と継時処理)の特徴を査定する。
本件児童に疑われるADHDの特徴として、物事を順序立てて処理することが苦手であることを考えると、同時処理の得点は比較的高いが、継次処理の得点が落ち込む可能性がある。
LDI-Rでは、学習症で想定されるさまざまな能力を査定する。
本件児童に書字障害が疑われていることを考えると、書く能力の得点が落ち込む可能性がある。
以上、この記事が私と同じように臨床心理士指定大学院を目指していらっしゃる方と共有できましたら幸いです。
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